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コル・レオニスを抱いて
―雨宵星―
自主制作乙女ゲーム
SAMPLE.2
正門を出たところ――電信柱の裏側で1人ソワソワしている中秋さんを発見した。
煌子
「…………」
携帯をいじるフリをしながら髪をいじり、かっこつけている姿は……見ていて痛々しい。
煌子
「ヒッキーさん」
このまましばらくその様子を観察してやろうかとも思ったが、あまりにも哀れだったので、私は彼へ声をかけた。
中秋隆哉
「ちょ……きみ、こんな往来でその呼び方やめてよ――」
※ ※ ※
意外すぎることに、中秋さんの運転はとても快適だった。
煌子
「信じられない。ヒッキーさんはペーパードライバーなイメージでした」
中秋隆哉
「ぼくは、初めて助手席に乗せる女の子がきみだってことが信じられないよ。絶望してる」
煌子・隆哉
「…………はあ……」
私たちは大きな溜め息を吐き出す。
赤信号で停車した際、中秋さんは後部座席に手を伸ばし、1冊のファイルをこちらに渡してきた。
煌子
「何ですか、これ」
中秋隆哉
「さっき入った依頼。他の探偵事務所から回ってきたんだけど、社内のセクハラ調査をしてほしいんだってさ」
煌子
「え~今からですか? 課題が――」
中秋隆哉
「きみ、研修落ちても良いの?」
煌子
「う……っ」
※ ※ ※
車から降りた私たちは大型機材を抱えて歩いていた。
煌子
「超重いんですけど……っ」
中秋隆哉
「それ、ぼくが作った機材なんだよ」
光学2000倍ズーム機能がついた長距離撮影機材なんだとどうちゃらこうちゃら語ってる中秋さん。でも、私からしたらただの重い機材でしかない。
煌子
「ていうか、外に出て調査したくなかったんじゃなかったですっけ?」
ぴたり、と中秋さんの歩が止まった。
(げ)
やばい。失言だ。
中秋さんは私へ微笑んだ。
中秋隆哉
「誰かさんがぼくのパソコン壊さなきゃ、ここにはいない……よね?」
煌子
「で、ですね! 本当にもう……スミマセン」
中秋隆哉
「いや、ぼくとしては修理代全額きみに請求しても良いんだよ? でも、かなり高額になるだろうからと思って優しさで免除してあげようと思ってたのに。そんなこと言うんだふーん」
煌子
「ほ、本当にごめんなさい。ヒッキー様」
中秋隆哉
「いやいや、こういうときくらいちゃんとした名前で呼ぼうよ」
煌子
「すみません、ヒッキーもっさり髪さ――」
中秋隆哉
「はい、修理代請求しま――」
煌子
「ごめんなさい! 中秋さん! 許して下さい!」